頸体角は股関節において基本的な知識になりますが、頸体角がなぜ存在し、どんな役割を担っているか考えたことや調べたことはありますか?
頸体角について今一度知識を整理して、股関節に対する知識を更に深くできれば臨床で役立つ知識になるかもしれませんよ!
いつもレントゲンでサラッと確認するだけで終わってしまいますが、頸体角について知ることでレントゲンから分かる情報を更に引き出していきましょう!
他にどんなことが分かるんだろう。
1.頸体角とは何なのか?
大腿骨頭は大腿骨軸より内側に位置しています。
前方に少し捻れた構造になっていて、大腿骨頸部が骨頭と骨幹部を斜めに連結しています。
この頸部軸と骨幹部のなす角を頸体角と呼びます!
正常は125〜135度程度だといわれています。
また、一般に140度以上を外反股、115度未満を内反股と呼びます。
外反股となると頸体角が極端に大きくなり、角度が垂直に近づいていきます。
すると、股関節にかかる荷重量が大きく増大してしまいます。また、レバーアームが小さくなる分、股関節周りに付着する筋への負担も大きくなります。
結果、頸体角が150度以上になると通常に比べて2倍以上の負担が筋肉にかかるといわれています。
内反股となると頸体角が極端に小さくなり、角度が直角に近くなります。
股関節としてはレバーアームが大きくなるため、外転モーメントが大きくなり、結果的に外転筋力の効率を増加させます。
しかし、レバーアームが横に大きくなる分、頸部への垂直方向への前断力が大きくなるため、骨頭滑り症や変形性股関節症を引き起こしやすくなります。
頸体角をリハビリで変えることは困難なので、これによって引き起こされる症状を考慮しながら介入を進める必要がありますね!
●頸体角が大きくなると外反股、小さくなると内反股となる!
●頸体角が大きくなればなるほど筋肉への負担が大きくなり、90度に近づくほど頸部への負担が大きくなる!
●頸体角によって引き起こされる症状を考慮しながら介入する!
2.大腿骨に頸部がなぜ存在するのか?!
そもそも、なぜ大腿骨にはこんなにも長い頸部が存在しているのでしょうか?
肩関節のように短い方が良い気がしますがなぜでしょう。
結論からお伝えすると、股関節の運動に伴う臼蓋とのインピンジメントを、回避し大きな可動域を得るというメリットを作るためだそうです。
若干外側にずれているからこそ、臼蓋に当たることなく大きく股関節を曲げることが可能になっているんですね!
加えて、運動中心と筋力の作用点の距離(レバーアーム)を大きくすることで中臀筋効率を高めることができます。
少ない力で股関節を動かすことができるのでテコの原理と同様の現象です。
頸部が短いままだと大きい外転筋の筋力を必要とすると同時に関節合力も増加してしまうため、荷重関節である股関節を効率的に動かすことが困難となるのです。
前にお伝えした通り、頸体角が大きくなることでレバーアームが横に短くなり、筋肉に負担がかかりやすくなることと同じですね!
しかし、頸部が出ている分、力学的には曲げモーメントが加わり続けるため弱点となってしまうというデメリットも存在します。
常に体幹と頭部の重さが頸部をへし折るように力が加わっているんですね。
ちなみに、片足を挙上させるだけで体重の2倍程の関節合力が股関節に働くそうです。
転倒した際に頸部骨折が多くなるのはこれが理由です!
3.股関節に負担がかかる動作一覧!
頸体角の知識を入れた上で、股関節に負担がかかる動作をおさらいしておきましょう!
骨頭と寛骨臼にかかる触圧覚をまとめたものになります。
動作 |
触圧覚(MPa) |
仰臥位 |
1.4 |
平行棒内歩行 |
3.4 |
歩行器歩行 |
3.8 |
T字杖歩行 |
4.8 |
独歩 |
5.5 |
ジャンプ |
7.3 |
ジョギング |
7.7 |
階段昇降 |
10.2 |
45センチからの起立 |
13.1 |
38センチからの起立 |
15 |
階段昇降が負担がかかりそうなのは分かりますが、椅子からの立ち上がりでこんなにも股関節に負担がかかるとは驚きです。
この表を活用して股関節患者への運動負荷量が調整できると、無理に痛みを出すことなく運動療法が可能になるかもしれませんね!
是非活用してみてください!
参考図書はこちら↓
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