脳のない動物はどうやって動いているのでしょうか?
この世には脳がない動物はいますが、身体のない動物はいません。
これを考えると末梢受容器による感覚を頼りに末梢効果器が働き運動が作られると考えられます。
そうなるといかにこの感覚と呼ばれるものが人の身体にとって大切なのか分かりますね。
今回は感覚と運動について、シナジーと呼ばれるシステムを含めてまとめていきます!
1.感覚受容器が外力変換装置!
脳へと感覚刺激を与えるには、まず神経に電気を流さないといけませんよね?
そこで重要な働きをするのが身体の末梢に存在する感覚受容器です!
感覚受容器に何かしら刺激が加わるとその刺激を電気信号に変換し、中枢へと電気信号を流していきます。
末梢に存在する感覚受容器は外力変換装置の先端と呼べることでしょう。
感覚受容器は固有結合組織内や表皮にまで存在しているため、結合組織のテンションバランスや表皮への感覚入力はそのまま神経系へと情報が入力されていくことになります。
足底の感覚入力は位置特異性というものが存在しており、足底のある部位の皮膚を刺激すると下腿の筋活動に変化が現れるといわれています。
そのため足底板やパットは足部から感覚入力を行う上でかなり有用です。
●感覚受容器が外力を脳へ伝える電気信号に変換させる!
●感覚受容器に問題があると誤った情報が脳へと伝わってしまう!
2.感覚神経の伝導路まとめ
感覚神経の伝導路は意識性のものと非意識性のものに分けられます。
意識性の感覚上行路は
温痛覚に関与する外側脊髄視床路
粗大な触圧覚に関与する前脊髄視床路
識別性触圧覚に関与する後外側路
非意識性の感覚上行路は
体幹の非意識性深部感覚(L1からTH1までの固有覚)に関与する後脊髄小脳路
下肢の非意識性深部感覚(L2以下の固有覚)に関与する前脊髄小脳路
上肢の非意識性深部感覚に関与する副楔状束核小脳路
3.シナジーで作られる歩行
感覚伝導路は様々ありますが、歩行と呼ばれる運動を考えると非意識性の感覚上行路の存在が重要です。
歩行と呼ばれる運動は意識的に作られた運動ではなく、無意識的に作られた運動です。
誰かに教えられたわけではなく、生まれてから自然に獲得した運動ですよね?
感覚を頼りに運動をする人間にとって、無意識の運動は非意識性の感覚を頼りにするのは必然的です。
しかしここで疑問なのが、人間は200個の骨と400個の筋肉があり、その組み合わせは莫大なものになりますよね?
その莫大な組み合わせから人はどのようにして安定した運動を生成しているのでしょうか?
結論からいうと、協同収縮系と呼ばれるシナジーというシステムを活用しているからだといわれています。
脊髄には神経が密に通っており、神経振動子と呼ばれるリズム発生、運動パターン発生機構があります。
その莫大の数の神経振動子が引き込み合った結果、シナジーに基づいて決まった運動パターンが発生します。
簡単に言い換えるなら個々に指示を加えるのではなく、グループに向かって指示を加えるって感じですかね。
グループに指示を加えることで、そのグループが一体化して動くのでパーツがバラバラであったとしてもまとまって動くことが可能になりますよね?
個々の筋肉が動いても運動パターンは作れませんが、グループ化した筋肉が一斉に動くことで運動パターンが作られます。
そのため、人間の運動生成にはこのシナジーというシステムが重要なのです。
人の身体から入ってくるあらゆる感覚入力が脊髄、あるいは脳で統合され、シナジーというシステムによってグループ化された筋肉に向かって指示が出され、歩行のような複雑な運動が生成されているというわけです。
感覚入力から運動を生成しているため、この身体という外力変換器が壊れていたり、誤作動が生じるとどうなると思いますか。
また、間違った感覚入力をしてしまうとどうなってしまいますか?
誤った情報が入力されるため、筋への出力にも誤った情報が伝わり、結果として運動は崩れてしまうことが予測できます。
運動が崩れると次第に身体は壊れていくので、さまざまな不調をきたすようになってしまうのです。
私たち、セラピストは感覚を操る専門家であり、クライアントに対してどの向きで、どんな力で、どのような感覚を入力できたらクライアントが良くなるかを考える必要があります。
外部からの情報を変えることでその人の動きが良い方向に変われば、日々の臨床はより充実していくにちがいありません。
●歩行は無意識下での運動だから、無意識下の感覚上行路を賦活する必要がある!
●歩行は作るものではなくシナジーによって作られてるもの!