突然ですが、あなたは拘縮と短縮の違いをしっかりと説明できますか?
それぞれに効果的なアプローチをかけられるでしょうか?
意外とぽい言葉でまとめて分かったふりをしているだけでかもしれません。
普段使っている言葉でもよくよく振り返ると、しっかり説明できないことは多いと思います。
基礎中の基礎の話でも、自信を持って学生や後輩に指導できるように今一度知識をまとめていきましょう!
1.関節拘縮とは?
関節拘縮とは、関節を構成する軟部組織が原因となり生じる関節運動障害で、炎症や組織損傷を伴うことが多い病態のことをいいます。
関節可動域制限は病理変化が起こっている部位の相違によって異なります。
拘縮と強直の違いは分かりますか?
意外とごっちゃになりやすく、正しくこの言葉を使い分ける自信はありますでしょうか。
ここで少し整理していきましょう!
まず、関節構成体によって起こる病態のことを強直と呼びます。
関節構成体とは、関節軟骨、関節、関節包、関節包靭帯などのことを指します。
そして軟部組織によっておこる病態を拘縮と呼びます。
軟部組織とは、皮膚、筋肉、腱、靭帯、神経拘縮などのことを指します。
このように、強直と拘縮とではどちらも硬さを作る病態になりますが、原因となっている組織に違いがあったのですね!
他動運動でどちらかを判断する際は可動性があるかないかで判断すると良いといいます。
関節構成体の病態よって引き起こされると可動性は極端に低下しますもんね。
逆に軟部組織であれば多少可動性は確保されるはずです!
そして、関節拘縮は不動が主な原因となるようです。
その他に外傷や、外科手術後にもみられます。
外傷や手術では組織侵襲による滑膜の肥厚、関節包や靭帯の癒着、肥厚、繊維化等によって生じます。
不動によってもらたらされる可動域制限は不動期間が長期化すれはするほど進行するといわれています。
拘縮の原因となっている組織は骨格筋が43%と最も高く、責任病巣の中心となっているという研究もあります。
最初の1ヶ月は筋が主な制限となり、2〜3ヶ月となると関節構成体が主な制限に変化するようです。
●強直は関節構成体の異常、拘縮は軟部組織の異常によって生じる!
●拘縮の場合はリハビリによる改善が見込める!
●拘縮の原因は最初は筋による影響が強く、時間の経過とともに関節構成体による影響も出てくる!
2.関節拘縮の原因を深く考える!
前章では強直と拘縮の病態についてまとめてきました。
ここでは、何によって関節拘縮が引き起こされ、どういった対処をすれば良いのかをまとめていきます。
拘縮の病態は関節運動が許容できないほど組織の伸長性が低下している場合と組織間の滑走性が低下している場合の2つに分けると理解しやすいです。
伸長性の低下は各組織自身が持つ長さが縮小した短縮ないし、繊維化によって生じます。
組織感の滑走性低下は、関節周囲組織間の癒着によって生じます。
通常はこれら2つの要因が組み合わさって拘縮が生じることが多いです。
なんとなく、組織間の滑走は癒着が原因で上手く滑り合わなくなると考えることできますが、筋で考えるとそう簡単には伸長性の低下と考えられないのです。
それはなぜかというと筋の病態として、筋肉が縮んだ攣縮という病態と本当に短くなってしまった短縮と呼ばれる病態に分けられるからです。
この短縮と攣縮はややこしいと思いませんか?
なんでもかんでも硬くなっていたら拘縮をだとか短縮だとかで判断しちゃってはいませんでしたか?
伸長性低下と判断するにはこれら2つをごっちゃにせずに、しっかり判断した上で評価、治療をすべきなのです。
攣縮の状態であれば、神経筋反射障害であるため、各種シナプス抑制が効いてくると自然に緊張は低下してきますが、短縮した状態であると神経学的抑制アプローチをしたとしても筋肉は実質の問題となるので大きい変化は見られないことでしょう。
また、攣縮は神経学的な問題であるため、筋が伸長位であっても弛緩位であっても高い緊張を認めるのです。
そのため攣縮と短縮の鑑別には基本的に触診でも行うことができます。
攣縮では虚血となっている状態であり、常に緊張状態となっているため、筋は圧痛を生じやすいですが、短縮している場合は緊張状態ではないため圧痛を生じにくいという特徴があります。
攣縮の場合は神経筋反射障害であるため、各種シナプス抑制が効かず暴走している状態であるため、リラクゼーション等の神経学的抑制アプローチが効果的です。
短縮の場合は筋実質の障害であるため、ストレッチングをすることが効果的といえます。
何もかもただマッサージして伸ばすのではなく、知識を深めたうえで病態に応じて適切なアプローチをしていく必要がありそうです!
●伸張生低下は攣縮と短縮に分ける!
●攣縮は神経的な問題であり、短縮は筋実質の問題である!
●攣縮はリラクゼーション、短縮にはストレッチングが有効!
3.関節拘縮への対処法!
今回は参考書に載っていた研究を元に、関節拘縮への対処法をまとめてみました。
関節拘縮の発生機序はラットや犬の膝関節を用いた報告が多いと言われています。
大体、15〜30日で膝蓋上嚢をはじめとする関節内軟部組織の閉塞、癒着及び繊維化が起こります。
次に40〜50日で関節軟骨に病変が現れます。
そこから60日を超えると関節軟骨の繊維化、潰瘍等を生じると報告があります。
拘縮は不動による循環障害から全てが始まるということが分かりますね。
循環障害によって生じた浮腫(フィブリン)が繊維化と修復過程で生じる組織間の癒着という2つの要素で更に拘縮を進めていき、関節が動きづらくなると攣縮をはじめとした神経的な問題や、短縮といった筋実質の問題まで引き起こされ、これがまた拘縮や強直を進めていくのです。
回復実験では30日以内の固定であれば正常に回復するが、40日以上固定された場合は回復が遅くなる、60日となると関節軟骨が破壊されるため回復は期待できないといわれています。
ここから分かる重要なことは繊維化を予防するための徹底した浮腫管理と各組織の機能解剖を考慮した固定部位の選択であるといえます。
癒着の予防は修復過程に移行するよりいち早く関節運動を開始し、組織間の滑走や伸長刺激を加えることが大切です。
また、固定期間を把握し、事前にどこまで回復するのか、どれくらい時間がかかるのか予測しながら目標設定していくことも大切だと思われます。
こういったことはある程度理解して臨床に臨んでいきたいですね!
参考図書はこちら!
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