肩関節は骨性の安定性に乏しく、周辺の軟部組織に助けてもらわないと安定性を保つことが出来ない関節ですね。
安定性には動的安定性と静的安定性がありますが、今回は前者の動的安定性についてまとめていきます。
動的安定性にはローテーターカフと呼ばれる腱板組織のフォースカップル作用が非常に大切だといわれています。
これらの機能がどう関わってくるのかおさらいしていきましょう!!
1.肩関節の不安定と安定とは?
まずは不安定と安定という言葉を整理していきます。
不安定=支点がなくぐらぐら
関節の求心性を保つことが出来ず、運動中心すなわち支点にブレがある関節を不安定な関節といいます。
原因は組織の破綻、器質的な緩み、また拘縮、筋力低下や収縮性スピードの遅延があげられます。
肩関節周囲のテンションバランスが崩れることで、運動中心がブレてしまい、支点が不安定になってしまいます。
収縮スピードも前後左右でタイミングがズレてしまうと、タイミングの早い方に牽引されてしまうので、運動中心がブレてしまうことは想像できますね。
安定=支点があり固定される
関節本来の理想的な姿で、関節の適正な支点がある状態をいいます。
簡単に言い換えると、安定した関節とは正常な軌道の運動ができる関節と言い換えることができます。
運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 上肢編 林典雄著 p5より抜粋
●関節が不安定となると回転軸がズレて関節運動の軌跡が逸脱してしまう!
●支点が定まった関節が安定した関節である!
2.ローテーターカフ(腱板組織)とは?
骨性の安定性に乏しい肩関節は、周辺軟部組織に安定性を依存する他なく、腱板を中心としたローテーターカフと呼ばれる組織が発達してきました。
腱板組織が上腕骨頭を囲むように上下左右と掴んでおり、求心位に引きつけています。
腱板組織があることで骨頭を捻っても、牽引されても、どんな方向に動いたとしても、関節窩に骨頭を引きつけているのです。
肩関節は腱板組織によって筋性の安定が付与されています。
3.外転時における棘上筋の役割
肩関節の外方運動での動的安定性についてです。
外転では三角筋と棘上筋はフォースカップル作用が重要といわれています。
三角筋と棘上筋が互いに協調して働くことで外転の運動がスムーズに行われるのです。
もし、棘上筋が働かず、三角筋だけで動いてしまうと、骨頭は上方に持ち上げられる作用が大きくなり、結果的に棘上筋が挟まれるような形になり腱板断裂になりやすくなるのです。
肩のレントゲンでモロニーズサインがあると、肩関節の上方変位が疑われるので要確認ですね。
通常は棘上筋が肩関節の支点を作り、三角筋による強力な回転モーメントにより円滑な外転運動が遂行されるのです。
このように2つ以上の筋が共同して一つの運動を遂行する機能をフォースカップル作用といいます。
●肩関節外転は棘上筋による支点作りと三角筋による動力で円滑な運動が遂行される!
●二つ以上の筋が共同して働くことをフォースカップル作用とよぶ!
●フォースカップル作用は肩関節の動的安定性を強化する上で重要な働きをする!
4.前後方向の安定性
前後方向の安定性は肩甲下筋と棘下筋が重要な役割を果たしているようです。
肩甲下筋は肩甲骨の前面から肩関節前外方の小結節に停止するため、骨頭の前方へのブレを抑える役割があります。
棘下筋は肩甲骨の後面から肩関節後外方にある大結節に停止するため、骨頭の後方へのブレを抑える役割があります。
これもまた、協調して働くことでフォースカップル作用によって骨頭を求心位に牽引する力が生まれるのです。
前後方向への安定性はこのような筋肉が関わっていたのですね!
●肩関節前後方向の安定性には肩甲下筋と棘下筋のフォースカップル作用が重要!
参考図書はこちら!! ↓
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