今回は日本健康予防医学会が提唱する治療理論「リアライン・コンセプト」についてまとめていきます。
私自身も勉強中の治療手技である『リアライン・コンセプト』は考え方が面白いので是非まとめていきたいと感じました。
どんな内容なのか興味がある方がいれば是非読んでいただけたらと思います。
1.リアライン・コンセプトとは?
リアライン・コンセプトとは、蒲田和芳(学術博士、理学療法士、日本体育協会アスレティックトレーナー)が発案した、関節の歪みへ根本から働きかける治療理論です。
理学療法士として、オリンピック選手やプロスポーツ選手などトップアスリートの痛みや悩みに長年向き合ってきた中で生み出された、実践と研究に基づいたコンセプトです。リアライン=re-(再び)+align(配列する)
つまり、リアラインとは歪んだり本来の動きを失ったりした関節を理想的な状態に整えるということを意味します。
人の関節に関わるあらゆる問題の根本は関節の歪みであり、関節の歪みを治療すれば、関節の問題は解決できるという考え方ですね。
関節の歪みは慢性的な関節の痛みやパフォーマンスの低下、怪我の後遺症の長期化等を引き起こす原因になるのでしっかり治療していきたい部分です。
むやみやたらに治療するのではなく、人の形を整えていくというシンプルな視点で考えることができるので、非常に考えやすい治療手技であると思います。
2.リアライン・コンセプトで重要な考え方
関節の歪みを治療し、正常の関節運動を導いてく上で重要な主軸が3つあります。
3つの主軸を基本にして評価から治療をしていくので非常に大切な考え方になります。
①治療の設計図
②高精度の評価
③高い治療技術
これが治療成績を高める上で非常に大切となります。
①治療の設計図
リアラインでは、症状がなぜ起きているのかを考えるために2つの因子を見抜くことが大切になります。
症状の原因と症状の結果で、原因因子と結果因子と呼ばれます。
例えば膝が痛いという症状があるとします。
痛いというのは膝の組織に炎症や組織損傷、筋スパズムが生じた結果、痛みという感覚が生じます。
結果因子の原因というものは膝関節の骨変形や不安定性、膝関節周囲筋の機能不全などが挙げられます。
根本まで考えていくとこういった原因因子というものが出てくるのです。
痛みの原因は炎症や組織損傷かもしれませんが、その炎症や組織損傷の原因まで深掘りして考えるべきなのです。
治療設計図では結果因子と原因因子をごっちゃにしないように2つの因子を見抜くことが、正しい治療設計図を作る上で大切だと述べられています。
②高精度の評価
精度の高い評価ができなければ、原因を見つけることはできません。
どんなに治療が上手い人でも精度の高い評価ができなければ、再現性は低くなるので治療成績に偏りができてしまいます。
そのため、高精度の評価は重要視されています。
リアラインでは高精度の評価として精密触診が推奨されます。
精密触診とはその名の通り、細かく触診をすることで組織を一つ一つ丁寧に触っていく触診評価のことをいいます。
③高い治療技術
治療技術がなければ原因を見つけることができても、どんなに評価が上手くいっても症状を治すことはできません。
リアラインでは高い治療技術として組織間リリースと呼ばれる徒手療法が推奨されています。
筋間や神経など組織間の癒着を剥がし、正常な滑走性を促す治療技術です。
指先を組織間に滑り込ませて、癒着を徐々に剥離させていきます。
3つの主軸が一つでも欠けてしまうと治療成績は一向に上がってこないということです。
3.評価から治療まで簡単な流れ
リアラインの評価項目に以下の項目が挙げられます。
①視診・観察
②病歴・既往歴
③画像所見
④アライメント
⑤結果因子
炎症/疼痛/組織損傷/筋スパズム/運動障害..
⑥原因因子
解剖学的因子/不安定性/筋機能不全/滑走不全/拘縮/マルユース..
評価結果に基づいてリアラインを行なっていきます。
リアラインとは歪んだり本来の動きを失ったりした関節を理想的な状態に整えていくことです。
リアラインを実施した後、スタビライズという段階に入ります。
スタビライズとはリアラインされた身体が歪まないように筋肉でパッキングする作業のことです。
スタビライズされていない身体は、時間の経過とともに元の歪んだ状態に戻っていくのです。
スタビライズされた後はコーディネートという段階に入ります。
コーディネートとはスタビライズされた身体で正しい動作の習得を行うことです。
正しい動作を習得することで、怪我の再発を予防することができます。
高精度の評価からリアライン、スタビライズ、コーディネートと進めていくのがリアライン・コンセプトの流れになります。
●結果因子
炎症・組織損傷→保護・適正負荷
ストレスを調整し、適正負荷に近づけることで組織回復を促進させる
決して、組織回復を阻害させてはいけない
症状→対症療法
筋スパズム→保護・適正負荷・対症療法
運動機能障害→運動療法
身体機能・構造の適応を誘発させることが大切
好ましい適応を誘発させることで運動機能障害を改善させることができる
●原因因子
解剖学的因子→手術・補装具
不安定性→ 手術・補装具
骨変形などの構造的な問題や、靭帯損傷や扁平足などの不安定性がゆえに生じる問題は徒手療法では治療困難であり、手術や補装具の使用が推奨される
ここでいう補装具は、リアラインが推奨している自社で作られたデバイスのことをいいます。
滑走不全→組織間リリース
筋機能不全→組織間リリース
組織本来の伸長性や短縮能力などの機能を取り戻すことで、特定の時間にではなく24時間使える組織に変化させる
マルユース→動作修正
異常動作を特定し、最適パターンを選択する
マルアライメントを作らせない動作を誘導する
4.まとめ
リアラインについてなんとなくお分かりいただけたでしょうか?
私自身はリアラインを学んでから、触診において自信をもって評価できるようになりました。
もし、興味がある方がいれば是非学んでみると良いと思います!